ⅩⅢ cafe’

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皆が同じ色のスーツを着て、同じ形に髪を整え、同じバッグ、ネクタイ、靴、顔面―― 見ただけで個々の違いが分からない、まるで昆虫のようだと思った。そして俺も、その昆虫の群れの一部となっていた。 頭の薄い、グレーのよれたスーツを着た採用担当の男が前に立って話している。ホームセンターでの一日の仕事内容は・・・ 歳をとって体のサイズが縮んだようで、サイズが合っていない。それが一層男をみすぼらしくさせた。 後ろに控える男たちも皆亡霊のようでみすぼらしい。 俺は馬鹿馬鹿しいと思っている。 ホームセンターなんて興味がない。興味があるのは日曜大工が趣味の中年男性くらいだ。 隣席の男は話を必死にメモしているが一体何を書くことがあるのだろう。 他の参加者にしても同じだ。こいつ等は果たして木材の虜なのか、家に帰ると檜の角材を何時間も眺めながら、ホームセンターに自らの将来を見出しているのだろうか。だとしたら天晴れである。 しかし、その可能性はない。 理由はただ一つ、こいつ等は皆、スーツの甲殻を着た昆虫であるからだ。 俺はこんな所で群れている自分に苛立った。この場から離れたい、若しくはこの甲殻をこの場で脱ぎ捨てたいと思った。自分は昆虫として生きていく事は出来ない。 社会に溢れる虫の群れとは隔絶し、一人の人間、岡野春一として生きたい、生きなくてはならないと強く思った。
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