プロローグ

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    ねえ、あの子はどうしたの?  どこにいったの? あの子は突然いなくなった。 ある朝起きたら忽然と姿を消していた。 ずっと一緒だったのに。 ずっと一緒にいるはずだったのに。 だからアタシは生まれて初めて膝をついた。 聖なる十字架に磔にされたその人の前に。 「どうか、マリアを帰してください」 ねえ、イエス様、聞いて頂戴。 あの子は私がいないとだめなの。 夜は一人でおしっこにもいけないのよ。 嵐の晩はいっしょに寝ないと駄目なのよ。怖がるの。怖がりさんなの。 だから、あの子は私がいないとだめなの。 ねえ、シスター聞いて頂戴。 「どうか、あの子を返してもらってきて」 私の大事な妹なの。 大事な大事な。 世界でたった一人の妹なのよ。 それから20年後。 私はついに彼女を見つけた。 『マリア』 その名は有史以来、もっとも無垢なセレブリティ。
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