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深呼吸をした。
目の前には天に届くのではないかと思ってしまうほど大きな白い城がある。
今日から私はここで働くことになる。
普段は何ともない私でも、その時ばかりは僅かに緊張しているようだった。
城門前に居た皆同じ格好をした見分けのつかない兵士に届いた手紙を見せ、謁見の間まで案内してもらう。
そのひときわ大きな扉を開いた先に、国王は居た。
豪奢な椅子に堂々と座る彼のもとまでは数段あり、自然と見上げることとなった。
そのまま暫く動かないでいると兵士に後ろから棒のようなもので突かれて、私はするべきことに気がついた。
ゆっくりと頭を下げる。
磨かれた床に自分の影が映っていた。
「頭を上げよ」
国王の低くて重い声が静かな場に響き、一呼吸おいてから頭を上げる。
空気の重苦しさに溜息をつきそうになったが我慢する。
相手の機嫌を損ねたらそこで終わりだ。
私は再び国王を見上げる。
自然と交わされる視線。
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