忘れ去られし記憶

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とある昔の、夜空に満月が浮かぶある日のこと。 腰よりも長い、黒髪の少女と胸下あたりまでの長さの栗色の髪をした若い、少女の母親がいた。 少女は疑問符を頭の上にたくさん浮かばせながらも、無表情だった。 少女は目の前で泣く我が母親に問いかける。 『お母様、どうしてお母様は泣いているの?』 母親は泣きながらも、逆に少女に問いかける。 『…ねえ、---?じゃあ、貴女はなんで泣かないの?』 少女は母親からの問いに首を傾げながら、こう答えた。 『それはね、私には感情がないからだよ――?』 母親は少女の言葉を聞き、悲しみに暮れた。 『ああ…ごめんね、ごめんね---…私の、私のせいで……!!』 大粒の涙を流す母親を、うまく表せないながらも心配そうな表情をする少女。 『お母様、私なんかのことで泣かないでください』
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