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あの人の住む建物は、まるでお城のようだった。二人は自分たちの目の前に現れるあの人の下僕たちを殺しながら、あの人のもとへ向かった。あの人のもとへついたときには二人は返り血に塗れていた。
「雫、よく来たね。やはり私のもとにつく気はないか」
「そんなの当たり前。子供たちを殺して、紅ちゃんのこと殺しかけて…!」
雫はあの人を殺気を溢れさせながら睨む。あの人はそんなのどうとでもないとでも言うかのように笑みを浮かべていた。だが、現実を言ってしまえば雫にプラスして紅もいる時点で彼に勝ち目はない。雫は、あの笑みは余裕からよりも諦めから来るものだろう。と考えた。
「仕方がない。殺したいのなら私を殺すがいいさ」
「じゃあさようなら」
雫はあの人に向かって大剣を振りかぶる。しかし、ことがそう上手くいくことなどありえない。それを示すかのようにあの人は、怒り、憎悪に染まりきっている雫をものともせずに吹き飛ばした。
紅が雫の名を叫びながら駆け寄っていく。雫は小さな呻き声をあげ、血を流していた。
「君らには実験台となってもらうよ。ちょうど実験体が欲しかったところなんだ」
あの人はにやりと笑いながら二人を見つめる。
「…お前は雫が欲しかったんじゃないのか?」
「私が本当に欲しかったのは、雫の力さ。あの回復呪文は最強だよ。雫を手に入れれば私はもっと強くなれる!」
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