序章

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人間たちは雫を物としてしか扱っていない。雫と出会ってから数年間、彼女を物扱いをしているところ以外を見たことがないのだ。 紅は奥歯を噛み締めながらあの人を思い切り睨む。 (人間風情が図に乗るな…!) 紅は雫を抱きしめながら立ち上がる。殺してやりたいとは思っているが、雫がこの状態ではむやみに動くととられ兼ねないこともあり、離れることはできない。 (いつか貴様を殺してやる…!) 紅は心の中でそう叫びながら、あの人の部屋から、建物から撤退をした。たった一人、部屋に残ったあの人は、狂ったように笑いながら叫んでいた。 「フハハハハハハハハッああ、いつでも私を殺しに来い!今度来たときにはお前たちをこの世界から消してやる!」 この叫びは、建物全体に響き渡っていた。 まるでこれが物語の始まりの鐘だとでも言うかのように―…‥
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