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セラは冬空の下、殺風景な野原に立っていた。
(ここは……)
どこだろう……?
そう思い周囲を見回す。すると遠から人々の列がゆっくりと近づいてきた。
(この人たちは……)
暗い雲のたちこめる空。雪の舞う野の道をゆっくりと進む人々。
皆一様に黒い装束を身に纏い、沈んだ表情で進んでいく。
セラの前を静かに通り過ぎていく。
(……葬送の……列……)
過ぎ去ってく列を静かに見送りセラは意識が遠のいていった。
* * *
(……!)
セラは目を覚ました。辺りをきょろきょろと見回す。そこは昨日レイリアという剣士から譲られた部屋だった。
「……夢か……」
窓の外を見ると日が昇り始めているのか薄く光が差し、窓辺からは小鳥のさえずりが聞こえた。
夜通し続いた祭りも終わりに近づいたらしく、祭りの喧騒も通りから少し離れた位置にあるこの宿屋までは届かなかった。
セラは立ち上がりカーテンをそっと開けた。窓の外は良く晴れていた。
朝靄の中、小鳥たちが家々の屋根の上で跳ね回っている。
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