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セラはそう言って荷物を持ち部屋を出た。
宿屋を出るとそこには馬車が止められていた。
レイリアに促され馬車に乗り込む。向かい側にレイリアが座り、扉が閉まると馬車はゆっくりと動き出した。
揺れる馬車の中、セラは黙ったまま車窓の風景が変わる様子をぼんやりと見ていた。
今朝の夢を思い出す。
悲しい葬送の列。静かな……。
「昨日はよく休めたかな?」
「――え?」
突然話しかけられセラは驚いた表情をした。正面に座るレイリアはセラを気遣うような表情をしていた。
「えぇ、おかげさまで、でもどうして?」
そんなことを訊くのか? と言いたそうにセラは首を傾げる。
「……いや、少し顔色がよくないように見えたものだから。大丈夫かな?」
セラは微笑みながら答える。
「大丈夫です。ご心配なく。ところで今日会う方ですが……、一体どの様な方なのですか?」
セラの質問にレイリアは真剣な表情になる。
「身分のとても高いお方なのだが、お身体が弱く床に伏した生活をずっとされている」
「ずっと……ですか?」
「……あぁ。昨日、君の竪琴を聞いて、少しでも慰めになればと思ってね」
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