序章

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 青年が素直な感想を述べ、少年はにっこり笑って席を立つと竪琴を注意深くケースに入た。 「ご静聴ありがとうございました。では、私はこれで……」 「あ……ちょっと待ってくれ」  不意に青年は立ち去ろうとした少年を呼び止めた。 「……? まだ何か?」  少年は不思議そうな顔をして振り返る。 「あ……いや……その……」 「……?」  青年はしどろもどろに言葉を続けた。 「君に是非会って欲しい方がいるんだ」 「私に?」 「そう……。そしてその素晴らしい演奏をもう一度して欲しいのだが……」  熱心に願い出る青年に少年はふむ、と考え答える。 「それは、別に……構いませんが……、どなた様ですか?」  少年の質問に青年は薄く笑い目を伏せる。その表情を見て、少年はその相手の身分がかなり高いものだと判断した。 「ここでは、その方について話すのは控えたい。今日はもう遅いので明日、ここに迎えに来る。それまでに考えておいてくれないか? ……それと、忘れ物だ」  青年は少年の手をとり、手の中に竪琴の礼金だと硬貨を滑り込ませた。  少年は手の中を見て驚いた顔をする。
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