序章

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「これは……払いすぎです。こんなに頂けません」  少年の手の中には金貨が握られていた。慌てて金貨を返そうとする少年の手を、青年は首を振りながら押し返す。 「これは君の竪琴に対する正当な礼金だ。素晴らしい演奏だった。……宮廷に仕える楽士のように洗練された音。久しぶりに良い音にめぐり会えた。……それと……」  青年はそう言い小さな鍵を取り出した。 「これはこの部屋の鍵だ。君に預けるよ」 「でも、この部屋は貴方の……」  鍵を渡され慌てる少年を見て青年はにこやかに話す。 「さっきも言っただろう? ここに迎えに来る……と。ここには君に居て貰わないとね。それに私は急な用事ができてしまったから、どちらにしろここに泊まることは出来ないし。店の女将さんには私から話しておくから」 「……ですが!」  鍵を返そうとするが青年は受け取らず、仕方なくしぶしぶと少年は鍵を受け取った。 「あぁそれと、大事なことを訊き忘れていた。君の……名前は?」  少年は名を訊かれ素直に答えた。 「……セラ」 「……セラ、か。私の名はレイリアという。ではセラ、明日、また来る」
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