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3 窓は中庭に面している。 陽光は正面の棟に遮られ、斜めに断ち切られて落ちる。 四周を、まるで城塞のように囲まれて、中庭には正午あたりしか陽は差し込まない。 「キライなタイプなら、いっぱいいるんだよ」 中根刀馬はうっとうしそうに、ツナギの襟元をひろげながら云う。 「ふうん」 千里は頬杖をついて、落ちつつある太陽を直視した。 「聞きたくない?」 「ききたくない」 「じつはさ、世界中の人間がキライなんだ」 「へえ」 「もう、みんなみんなキライで」 ◆
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