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眠らないメガロポリスの向こうの。
自然保護地域との境。
山の端の一番低いところから、灯りとは明らかに違う、丸い光が小さく空に上がっては消え、消えては上がっているのが見える。
「彼がいたら……きっと飛んでったわよ。あそこまで。」
「え?なんで?」
「花火、大好きだった――って。」
「へえ。」
「弟さんがね、そう言ってたことがあって。
彼…、子供の頃から打ち上げ花火が大好きだったんだって。
夏休み中って、土日には必ずといっていいほど、どこかで花火大会やってたでしょ?
だからね。地元や近くの花火大会には必ず行ってて、どこか遠くの花火の音を聞きつけると、意地でもその場所をつきとめて、なるべく近くまで行って見るんだって。
弟さんを自転車の後ろに乗せてね。」
「へえ!俺も花火大好きだけど……。そうまでして見たいとは思わなかったなあ。
はは!いかにもアイツらしいけど、バカだなあ。」
彼は彼女の話に半ば感心し、半ば呆れて笑った。
「弟さん、すごく懐かしそうに嬉しそうに話してたな……。そういうお兄さんだから、ホントに大好きだったんでしょうね。」
「ああ……。」
ちら、と見た彼の横顔が、ふと淋しげに曇る。
彼女も。
明るく人懐こい、今は亡き友人の笑顔が思い出されて、なんだか胸がきゅうっと痛んだ。
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