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「花火……。花火の音が聞こえる。」
「え?ホント?」
彼女は再び窓辺に歩み寄り、彼も立ち上がって耳を澄ます。
「聞こえないよ、何も。気のせいじゃない?」
彼は苦笑しつつも、彼女の傍らに立って窓の外を見る。
「確かに聞こえたんだもん。」
彼女は信じてくれない彼に、口を尖らせてみせる。
彼は肩をすくめて苦笑した。
「いい風だな。」
彼が目を細めて気持ち良さそうに、そう言った時。
彼女が、「ほら!」と声を上げた。
「ね?聞こえたでしょ?」
「え?ホント?わかんなかった……。」
今度は真剣に耳を澄ます。
「?」
かすかだが、彼の耳にも花火の音が届いた!
「ホントだ!花火だ!」
「でしょ?」
「うん。でも、どこで上げてるんだろう。」
ふたりは窓から身を乗り出した。
耳を澄ませ、目を凝らし、首をめぐらせて音の出どころを探す。
「あっ……。あそこ!!」
ふたり同時に。
ひとつの方角を指差した。
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