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息子がいなくなった次の年の同じ日(ハロウィン)に、婆の元に悪魔が訪れました。
頭が人間の二倍は大きく、耳は尖り、目は血走って朱い、とにかく人目には人間とは思いもしませんでした。
しかし、悪魔は呟いたのです。
『Trick or treat』と。
当然あばら屋に何かあったわけではありませんが、とりあえずパンを一切れ与えました。
今思えば、自分でも驚く程冷静に対応したと思います。
すると、悪魔はニッと明るい笑みを浮かべ、私の中で天使になったのです。醜く、小汚い様ではありますが天使なのです。
悪魔は、次の年も、また次の年も、そのまた次の年もやってきては、婆にできる最大限の最低なもてなしに笑顔を浮かべ、帰るのです。
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