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婆の一年はハロウィンに天使に会うためにあるようなものでして、そのために生活は困窮を極めましたが、あの天使に会えると思うと、なんら苦ではなかったのです。
そして、10年目でしょうか。
婆は人生最大の過ちを犯してしまいました。
あろうことか、天使に愚痴を漏らしてしまったのです。
生活が苦しいと。
天使に会えることだけが人生唯一にして至高の幸福であるのに、その上裕福まで求めるなんて、嗚呼、婆はなんて強欲で愚かな人間なんでしょう。
案の定、次の年から天使は現れなくなりました。欲を垣間見せたばかりに、いや、欲深い、肥えた薄汚い心を持ってしまったばかりに、婆は唯一の幸福を逃してしまったのです。
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