Trick or treat

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もう昔の話です、と付け加え、婆は静かに語り終えた。 街の喧騒はまだまだ収まる気配を見せず、山火事のように橙色が轟々と唸っている。 陰湿な魔力に満たされたあばら屋で、小鬼が小さく語り出した。 『婆は僕が初めて訪れた10年前から今日まで、僕に弱音を吐かず、これまでお菓子を恵んでくれた。もう罪は償われたはずだろう。そもそも、強欲とは人間の性なのだ。とは言え、婆の己を戒めんとする心に、僕は深い感銘を受けたよ。ところで、やはりこのケーキは仲間と一緒に食べたい、というか自慢したいので、持って帰ることにするよ。昔話、ありがとう。』 そういうと、小鬼は婆の返事を聞くより速く、扉を開けてでていってしまい、開いた扉から一辺に魔力がでていった。
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