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変えたくない。 何かを求めるのも、振り払われるんじゃないかと思うと怖くて踏み出せない。 それなら、何も変えなければいい。 そう思うのに……。 「あんたのそんな顔を見ていいのも、泣かせていいのも……」 求めてしまうのは何故ですか? 「……俺だけだ」 「……っ」 低く呟かれた最後の言葉は、わたしの唇に吹き込まれた。 優しく触れる柔らかなそれが部長の唇だと気づいた時には、腕を掴んでいた筈の部長の左手はわたしの背中を抱き、右手は後頭部の髪の間に差し込まれていた。 「ん……っ」 思わず浮かべた自分達の姿に我に返り身体を離そうとすると、部長の両手に力が込もってわたしは身動きできなくなってしまった。
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