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背中に回された腕はまだわたしを拘束していて、後頭部にあった手はわたしの前髪を掻き上げた。 「しいて言えば……」 ようやく落ち着き始めた呼吸。 なのにそれと反比例して鼓動が早くなる。 声を聞く程に、見つめられる程に、触れられる程に……どんどん惹かれていく自分を思い知らされる。 「あんたのせいかもな」 「ぶちょ……っ」 また部長の腕に引かれ唇が降ってきた。 ずるい……。 きっとこの人は、わたしが拒めない事を知っている。 この腕を振り払えばいい。この胸を突き飛ばせばいい。 離れるのは簡単なことなのに、それができない。
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