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「朝食も一緒にとれたら良かったんだけど……忙しなくて悪いね」
そう言って微笑む部長からバッグを受け取って、首を左右に振った。
「いえ、そんな……」
もうそれ以上何も言わないでほしい。
舞い上がってしまうような言葉を言わないで。
「わざわざありがとうございました。お仕事、頑張ってください」
離れたくないとすがり付いてしまう前に会釈をして背を向けた。
けれどすぐに腕を掴まれて引き戻されてしまった。
「……っ」
部長の腕の中で重ねられた唇。
明るい太陽の下、いつ誰が通るかわからない公の場でされたキスは、ひどく甘くて。
「……充電。また月曜日」
極上の笑顔と囁き、甘い香水の香りを残して車は走り出して行った。
大通りに出る角を曲がって車が見えなくなるまで、わたしはそこに立ち尽くしていた。
「今の、どういうこと?」
背後からそう言われるまで。
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