じゅういち

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非常口のライトしかついていないロビーは薄暗くて、受付やいくつか置かれたイスのシルエットが辛うじて見えるだけ。 物にぶつからない様に慎重に歩いて重めのガラスでできたドアを押し開くと、途端に吹き付ける冷たい風に思わず顔を背けた。 「やっ……」 すると、ぐんっと何かに引かれて身体が前のめりになる。 倒れるっ! 痛みを覚悟してぎゅっと目を閉じた。 けれど転ぶどころか、想像していたのとは違う衝撃がわたしを襲った。 「遅い」 甘い香りとやわらかな声が、固まるわたしに降ってくる。 「何で……っ離して、ください。……部長っ」 わたしを抱き止める部長を押し返してもびくともしなくて、唇を噛み締めた。 どうしてこの人はいつも、こんな風に現れるのだろう。 「無理。言っとくけど、あんたに拒否権はないから」 ズルいよ、部長…… あの人の肩を抱いた腕で、わたしを抱き締めるなんて……
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