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ここはクリスマスの翌日の夜、綾野ちゃんとやって来たホテルのロータリー。
そう。
部長が金髪女性と去って行った、あのロータリーだ。
わたしの勘違いだったとはいえ、あの日に感じたショックと胸の痛みは本物だった。
都築さんの彼女だとわかっているけど、やっぱり他の人に触れるのは嫌なんだ。
自分でも心が狭いと思う。
でもやっぱりここは、わたしにとっていい思い出がある場所ではない。
けれどそんなわたしをお構いなしに、部長は手を引いてどんどん突き進む。
エレベーターの扉の前までやってくると、部長はようやく歩みを止めた。
やってきたエレベーターに乗り込んでも、やっぱり居心地が悪くて俯いて繋がれた手に力を込める。
すると小さな笑い声の後、手を引かれあっという間に抱き締められた。
何を言われるわけでも、言うわけでもなく、エレベーターが到着するまで、ただそこにいた。
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