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恥ずかしさで気絶しそうになりながら、ブンブンと左右に首を振る。
「冗談だよ。今さら急がねぇよ」
喉から笑いを漏らしながら、わたしの髪を撫でる。
「せっかく綺麗にしてもらったんだし、これに着替えてもらえる?」
差し出された紙袋には、誰もが知っているようなブランドのロゴが入っていた。
「無理ですっ。こんな高い服、着れません……第一、パーティーだなんて……」
「何も言わずに連れて来たのは悪かったと思ってる。……なぁ、桃花」
ソファの縁に座っていた部長が、絨毯が敷かれた床に膝をついて、わたしの手をとった。
それはあの日を思い起こさせる。
初めて部長にあった日。
トクン、トクン、と鼓動が煩いくらいに騒ぎ立てる。
「桃花も気づいてると思うけど、俺には桃花に言ってないことがたくさんある。でも、ずっと隠しておきたいわけじゃない。あんたに話す為に、そのきっかけが欲しいんだ。今日もそのうちのひとつだと思ってほしい」
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