じゅうよん

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真っ直ぐに目を見る部長に、胸が苦しくなる。 せっかく施してもらったメイクが台無しにならないように、唇を噛み締めた。 そうしないと、涙が溢れそうで。 ぼやけた視界に映る部長は、困ったように眉を下げた。 「何て顔してんだ。傷になるだろ」 そう言って、きつく結んだ唇に部長の指が触れた。 少しひんやりした指先に、口元の力を緩める。 「いい子だ」 そして与えられたキス。 「……これを着たら、部長の隣にいても恥ずかしくない女性になれますか…?」 部長から受け取った紙袋の持ち手を握り締めて、声を絞り出した。 ずっと思っていた。 彼の隣にいるには、あまりに子供なんじゃないかと。 たいした恋愛をしたことのないわたしじゃ、与える愛を知らなすぎるんじゃないかと。 何もかもが完璧な彼の隣にいるにはわたしは不相応なんじゃないかって。
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