じゅうよん

14/19

51510人が本棚に入れています
本棚に追加
/806ページ
高級な服を着たからって、わたしが変わるわけないことなんか十分わかっている。 でも謎に包まれた部長のことをひとつひとつ知る度に、彼との距離が遠くなる気がしてならない。 爪が食い込むくらいに握り締めた手を、部長の手がやんわりと制した。 「あんたはバカだな。何もわかってない」 握り締めた手のひらをゆっくりと開いて、爪痕の残ったそこを優しくなぞる。 「俺はあんたが隣にいて恥ずかしいなんて思ったことない。むしろ見せびらかしたいくらいなのに」 わたしの手のひらに唇を寄せる部長の姿は、本当に王子様みたい。 現実味のないその光景を他人事のように見つめていると、整った顔が近づいてきた。 目を閉じてそれを受け入れる。 「……キス魔、ですね」 甘い空気に沸き上がる羞恥心を誤魔化す為に呟くと、彼は目を細めて口角を上げた。 「あんたにだけだよ」
/806ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51510人が本棚に入れています
本棚に追加