じゅうよん

16/19
51509人が本棚に入れています
本棚に追加
/806ページ
別に叱られたわけでもないのに、その一声で背筋が伸びる。 そんなわたしの反応がおかしかったのか、後ろから小さな笑い声がした。 そして頭を固定していた手が外され、首元にヒヤリとした感触。 それに触れてみると、小振りな石がついたネックレスだとわかるけれど、鏡がないから見ることはできない。 「次はこっち向いて」 ゆったりとした口調に従って体勢を変えると、ルージュで唇をなぞる。 部長は口の端を持ち上げて意地悪に笑って、困ったな、と目を細める。 「イチゴみたいでおいしそうで、何回塗っても追い付かない」 いつだったかイチゴは嫌いだと言った、その唇が一瞬だけわたしに触れる。 「できた」 キスが仕上げだといわんばかりに、親指で自分に移ったルージュを拭いながら妖艶に微笑んだ。
/806ページ

最初のコメントを投稿しよう!