51505人が本棚に入れています
本棚に追加
/806ページ
「うるさい。そろそろ時間だ」
恨めしそうに部長を睨むサラさんをヒラリと交わすあたり、彼らの間にはわたしの知らない月日があるのだと思い知らされた。
部長が幼なじみだと言うのだからその言葉を信じたらいいのに。
ヤキモチなんてみっともなくて、こんな感情を持ってるなんて知られたくない。
汚い気持ちを握り潰すみたいに、部長のスーツをキュッと掴んだ。
「どうかした?」
サラさんに向けられたのよりずっと優しい声で訪ねられ、小さく首を振る。
頭上からいつもの笑い声が聞こえたかと思うと、柔らかいもので身体を包まれた。
何事かと部長を見上げてから肩口に目をやると、薄いピンクのコートが掛けられていて。
「外は寒いから、ちゃんと着て」
もうすぐパーティーが始まる。
とうとう部長が閉ざしていた扉を開いてくれるのだと思うと、言いようのない感情の波に飲み込まれそうになった。
それは期待か、それとも不安なのか。
最初のコメントを投稿しよう!