じゅうご

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化粧室を出てすぐ。 パーティー会場があるフロアに繋がる通路の壁に、部長がもたれかかっていた。 その姿を見ただけで、好きだという気持ちが溢れ出す。 「桃花?」 駆け寄って腕に絡み付いた。 甘い香りのする彼の声は優しくて。 部長に羞恥心がない、なんて思ってごめんなさい。 わたしだって、人目を気にしないでこんな所で部長に抱きついてる。 触れたいって思う方が自然なんだね。 「ありがとうございます。服も……これも」 首元の赤に触れると、部長は目を見開いたけれど、それは一瞬だけですぐに笑顔に変わる。 「似合ってるよ」 前髪に落とされる軽いキスの後、 「少し、話をしよう」 そう言って、クロークに預けていた筈のコートをわたしの肩に掛けた。
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