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レストランの敷地内に広がる洋風の庭に踏み入ると、冷たい風が頬をかすめた。
けれど寒さなんか感じないのは、部長が隣にいるからだろうか。
手を引かれて歩くと、暗闇に真っ白なベンチが浮かび上がった。
二人でそこに座ると肩を抱かれて、わたし達の距離は一瞬で縮まった。
微かに聞こえる談笑する声と、道路を走る車のエンジン音。
それを遮って耳に届いたのは部長の声だった。
「何から、話すかな……」
一人言の様に呟かれた声に、顔を上げようとすると、それをさせまいと肩に回された部長の手に力が込められて動きを制された。
「あんたは何で、『フォレスト』に入った?」
「え?」
「今の仕事、楽しい?」
そんなことを聞かれるなんて思わなくて、咄嗟に答えることができなくて。
少しだけ思考を巡らせてから口を開いた。
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