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眞生さんの胸元をキュッと掴むと、それが合図になったかのようにキスはより深くなる。
いつも彼の香水の香りと甘い刺激に酔わされてしまう。
波間を漂うような、ゆらゆらと緩やかな心地よさ。
小さなリップ音をたてて離れた唇が、わたしの頬に触れたと思えば、優しい引力によって彼の腕に包まれた。
呼吸もままならず、眞生さんの胸に頬を預けたまま肩を上下に揺らして酸素を吸い込む。
「桃花……」
わたしの髪を梳く眞生さんの大きな手。
頭のてっぺんに触れる唇。
わたしを呼ぶ声。
全部、全部愛しい。
今までの嫌なことを、彼との未来で塗り替えていきたい。
そしていつか、幸せな人生だったと伝えたい。
「桃花、こっち向いて」
両側の頬を包んで上を向かされると、色素の薄い瞳は真っ直ぐにわたしを捉えていた。
「一緒に、暮らそうか」
そうして降りてきたのは、砂糖菓子よりも甘い甘い、身体の芯から蕩けそうな深い口づけ。
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