にじゅうさん

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年度末を迎え、何日も何週間もバタバタと過ごし、ようやく社内が落ち着き始めたのは三月下旬だった。 「うぅ……重、すぎるっ」 今年度お世話になった去年度の企画・営業資料を段ボールに詰めて、資料室まで運ぶのに階段移動は辛すぎる。 たった一階だからと甘く見ていたけれど、紙の束は想像以上に重くて、普段使わない、わたしの軟弱な筋肉達は悲鳴をあげていた。 「うぁっ、もう無理っ」 階段の踊り場で限界を迎えて、ドスンッ、と段ボールを床に置いて大きく息を吐いた。 三月下旬ともなれば日中は暖かくて、少しバタバタしただけで額に汗が浮かぶ。 「保田さん、鬼だ……」 だいたいおかしいと思ったんだよね。 保田さんが進んでジュースを差し入れてくれるなんて。 それも胡散臭さ満載の笑顔で。 「よし。飲んだな。じゃあ、市古。お前は資料を資料室に運べ」 なんて言われた時に、どうしてあの笑顔を疑わなかったのかと自分を呪った。
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