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「それじゃあ、好きな食べ物は?」
ベッドサイドのライトだけを灯した寝室で、わたしは眞生さんの胸に背中を預けて座っている。
『明日も休みだし、たくさん話がしたいです』
そう言ったわたしに嫌な顔せずに眞生さんは頷いてくれた。
きっとわたしの異常な緊張が伝わったからだと思う。
「そうだな……野菜がたくさん入った味噌汁が好きだな。家に帰ってきたなって気がする」
「作りますっ」
「楽しみにしてる」
そんな会話をして一時間近くが経っていた。
眞生さんと一緒に暮らすということに緊張感を抱えていて、何とかして誤魔化そうとするわたしの髪に、彼の指が滑り降りた。
途端に跳ねるわたしの心臓。
「……桃花」
それを知っているかのように、わたしの耳元で囁く甘い声。
きっとくっついた背中から、わたしの慌ただしく加速する鼓動が伝わっている筈。
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