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こんな途切れ途切れで伝わるのかな。
恥ずかしさで顔から火が出そう……。
「桃花、こっち向いて」
「い、今は無理ですっ」
「無理じゃない」
抵抗するわたしを持ち上げて、いとも簡単に向かい合わせに座らされてしまった。
それでも恥ずかしくて俯いていたのに、眞生さんはわたしの顎を持ち上げるから顔を上げるしかなくて。
「だめっ、だめですっ! 絶対変な顔してるからっ」
せめてもの抵抗として、自分の目を覆ってみても、男の人の腕力に敵うわけもなく、すぐに引き剥がされてしまう。
「暗いから見えないよ。それに、煽るあんたが悪い」
「煽ってなんか……っ」
わたしの声は、近づいた眞生さんの唇に吸い込まれてしまった。
不意打ちの口づけに驚いて開かれたままのわたしの視界には、睫毛を伏せた眞生さんが映っていて。
暗くて見えないなんて……嘘つき。
そして髪に指を差し入れられて、静かに目を閉じた時、小さな声がした。
「あと少しだけ、待ってやるよ」
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