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「違います。思い出したんです。まだお礼を言ってなかったから」
「お礼?」
キュッと眉間に力を込めた彼。
「昨日、ベッドまで運んでくれたんですよね? ごめんなさい……それから、ありがとうございました」
そう言って頭を下げると、上から小さな笑い声が降ってきた。
不思議に思って顔を上げれば、腰を屈めた眞生さんからの触れるだけの不意打ちのキス。
「いいよ、そんなことくらい。あんたに触る口実になる」
「でも、疲れてるのに……迷惑を……」
「何度言ったらわかる? 迷惑なんかじゃないよ。遅くまで一人にさせた俺が悪い」
どうしてこの人は、全てを自分のせいにして悪者になろうとするのだろう。
「悪いけど、たぶん今日も遅くなると思うから、今日はちゃんとベッドで寝ろよ」
相変わらずキス魔な眞生さんの唇がわたしの額でリップ音を鳴らした。
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