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遅くなるから車通勤をするという眞生さんに、一緒に乗って行けと言われたけれど、丁重にお断りして、わたしはいつも通りの電車に乗り込んだ。
ほどほどとはいえ、満員電車は億劫だけど、今日から新年度が始まるというのに『遠藤部長と仲良くご出勤』の図なんて見られたら、社内のお姉さん達に睨まれて平穏な会社生活なんて送れる気がしない。
目的の駅に到着すると、車内にいた半分が下車した。
身長が小さめのわたしは、いつももみくちゃになりながら改札へと向かう。
「ベリー先輩!」
二日に一回、こんな風に呼び止められるのにも慣れっこ。
「おはよう、四方くん」
背後には、別の車両に乗っていたであろう一年後輩の四方くん。
「今日から新年度っスね! でもまた今年もウチに新入社員来ないらしいじゃないっスか。いつになったらオレ、下っぱ脱出できるんスかねぇ」
唇を尖らせていじける彼は、実は企画部最年少。
四方くんは今年で四年目になるけれど、未だに企画部内での後輩がいない。
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