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下を見ると、眞生さんとお母さんはリビングに入っていくところで、わたしの視線に気付いたのか、突然彼が振り返った。
「……っ」
きっと、彼はわたしの心臓を壊したいに違いない。
一瞬だけの微笑み。たったそれだけで射抜かれる。
すでにお母さんとリビングに入っていった彼がいた場所から目線を上げて、小走りで部屋に戻った。
さっきまで着ていた服を脱ぎ散らかしたままの部屋に入ると、その場に座り込んだ。高鳴りが抑えられなくて、息ができない。
目の前の姿見に映ったわたしの顔は、桃色のシフォンワンピより赤くて。
「どうしよ……」
好きで好きで、好きすぎて仕方ない。
ううん。
もう、『好き』なんて言葉じゃ足りない。全然、足りないんだ。
生まれて初めて芽生えた感情は、わたしを甘い世界へと包み込んでいく。
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