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熱と欲に濡れた栗色の瞳は、今までに見たどの顔よりも艶めいていて、その色気に当てられてしまいそうになる。
「あんたは……俺の理性を簡単に奪うんだな」
至近距離で見つめられながら、スルリと頬を撫でる手は火照り過ぎた体温に心地よくて。
「……ごめん」
「まさ……っ」
瞬く間に後頭部を引き寄せられる。
それは、何に対しての『ごめん』なのだろう。
この苦しいくらいに深く重ねられるキスに対してなのか、その目に浮かぶ欲に対してなのか。
何にしても謝ることなんてないのに。だって、あなたを欲しがったのはわたしだから。
「好き。好きです……」
何度も名前を呼ばれて感じる幸せに、今この場で心臓が止まっても構わないとさえ思った。
それからはもうよく覚えていなくて、わたしを翻弄する吐息と体温、気の遠くなりそうな刺激に溺れるだけだったように思う。
「愛してる―…」
甘い香りと温もりに包まれて途切れそうな意識の中で聞こえた言葉は、夢なのか現実なのかわからないけれど、わたしをこれ以上ないくらいの幸福へと導いたのは確かだった。
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