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「綾野ちゃん!」
会議室を出た瞬間、わたしは綾野ちゃんに抱きついた。
女性らしい花を思わせる香水らしき香りがが控え目に漂う。香りはこんなに上品なのに、くっつくわたしを見るその目は鬱陶しそうで、美人な彼女には何とも不釣り合いだ。
「やめてよ。部長に睨まれるから」
「一緒に頑張ろうね!」
わたしがそう言うと、眉を寄せていた綾野ちゃんの表情が綻んだ。
わたし達は今日付けで、企画担当指揮者に任命された。
役員会議ので話し合われた結果、わたしの企画だけでなく、綾野ちゃんの企画も採用されることになったのだ。ターゲット層が似ていたこともあり、この際二つの企画を一つのものとして進行してはどうかということになったようだった。
あの広い土地に、わたし達が手掛けた新店舗ができる。
今までみたいに曖昧なものでなく、わたし達のアイデアが形になるんだ。
「絶対、成功させよう」
そう笑う綾野ちゃんも、わたしと同じくらい気合いが入っているんだと思う。
仕事に対して、『やりがい』というものを初めて感じたかもしれない。
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