第三章

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昼下がりの青山通りは平日にもかかわらず、今日も華やかな人々で賑わっていた。 人間ウオッチングとばかりに、出来の良い顔を探して外を眺めるのが高広の日課だったのだが、クリニックのオフィスの窓からの景色をぼんやりと見つめる目に、実際は何も写ってはいなかった。 「ハァ~」 ラ・トゥールで彩乃に会った日から三日が過ぎたが、あれから仕事にも身が入らず気が付けば溜め息ばかりついている。 会ったといっても知り合えた訳ではない。 彩乃の顔を一目見た瞬間、全ての思考がぶっ飛んで身体が固まった。 どれくらいの時間そうなっていたのか、必死で名前を呼ぶ声に我に返ると、目の前には鬼の形相の静が顔を真っ赤にして睨みつけていた。 「おぞましい」と口をついて出そうになったが、そこは大人の理性で何とか踏み止まる。 「高広さん…ひょっとして朝霧 彩乃とお知り合いなの?」 「朝霧…彩乃…朝霧って、ひょっとしてあのASAGIRIの!?」 「そうよ、彩乃だけじゃなく、あの4人とも秀琳の同級生…だったわ」 「同級生!じゃ友達なんだね、挨拶するんだろ?僕にも紹介し 「イヤよっ!!」 言い終わらない内に、赤鬼静が一刀両断とばかりに金棒を振り下ろした。
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