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指定されたショッピングセンターの駐車場に車を停めると、さなえは時計を見た。
約束の午後一時までにはまだ10分ほど早かった。
さなえは気分を落ち着かせようと缶コーヒーに口をつけた。
手が震えているのがわかった。
『大丈夫。大丈夫よ。』さなえは自分に言い聞かせるように小さくつぶやいた。
家を出る時は念入りに化粧をしてきた。『あの人に気に入ってもらえるかな?。気にいらなかったらどうしよう?』そんな気持ちが、さなえを鏡の前から動くのをためらわせた。
だがルームミラーで自分の顔を見ると、いくぶんこわばっているのがわかった。無理に笑顔を作ろうとしてみたが、緊張のせいか、かえって変な顔になるのでやめた。
さなえはそれほど顔に自信が有る訳ではない。でも十人並みだとは思っている。スタイルもまあ普通。胸は…大きくはないが、それなりにある。
そんな事を思いながら、胸のドキドキをなんとか鎮めようとしていると、いきなり携帯が鳴った。
思わずドキッとして携帯を見るとあの人からのメールだった。
『ごめん。ちょっと遅れる。』簡潔な文章だったが、さなえは、は~と深いため息をついた。
どうせなら早く会いたい。でも会うのは何だか恐い。相反する気持ちが、交互にさなえを襲うのだった。このまま帰ってしまえば気持ちはとても楽になるだろう。でも、もしかしたら後悔するかもしれない。『どうしよう?』今更ながらさなえは迷っていた。
一台の車が駐車場に入って来ると、まっすぐさなえの車を止めている場所へ向かって来るのが見えた。
さなえのドキドキはいきなり最高潮を迎えた。胸に手を当てて、目を閉じて、何とか落ち着かせようとするのだった。
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