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男のキスは、優しく巧みだった。男の舌はさなえの舌と絡めたかと思うと上顎の裏、そして下顎の裏へと忙しく移動し、巧みに刺激するのだった。
さなえは体中の力が抜けていくのを感じた。
男が唇を放すと、「もっと。」とさなえの口から思わず声がもれた。さなえはそんな自分に気が付き、思わず顔を赤らめた。
「お・あ・ず・け」男はさなえの唇を人差し指でチョンチョンとつつきながら、らかうようにそう言った。
「さなえはキスが好きみたいだね。」
「はい。」さなえが素直に答えると、
「いっぱい我慢出来たら、ご褒美にいっぱいキスしてあげるよ。」男は優しく言った。
さなえは何だかとても嬉しく感じた。
『何でも耐えて、この人の好みの女になって、たくさんたくさんキスしてもらうんだ。』
さなえの心の奥に眠っていたマゾの性質が、すでに顔を覗かせはじめていた。
「さあ、始めようか。」
そう言うと男はバッグから革製の黒い首輪を取り出した。
「この首輪を今からつける。これを付けている間は、さなえは私の奴隷になるんだ。いいね。」
「…はい。」さなえは胸のドキドキを必死に抑えながら、消え入りそうな声で返事をした。
男は首筋にかかる髪の毛をかき分けながら、さなえの細い首に首輪をつけた。
ひんやりとした皮の感触にさなえは泣き出したいほどの緊張を覚えた。
「これを付けている間は、私の言う事には絶対服従だ。『嫌』とか『やめて』とか、否定的な言葉は一切禁止!いいね。」
「はい。」今までの優しい雰囲気から、急に厳しい口調になった男の言葉に、さなえは緊張しながら答えた。
「言う事を聞かない時は、キツいお仕置きが待ってる。」男は冷たく言い放った。
「はい。」
「そう。いい子だ。言う事を聞けば、最後にご褒美が待ってる。」そう言うと男はさなえの頭を軽く撫でた。
男はタバコに火を付け、ゆっくり煙を吐き出すと、「まず、さなえのカラダを見せてもらうかな?そこに立って脱いで。」と部屋の中央を指差した。
部屋の灯りは煌々と明るいままだった。『こんな明るい所で?』そんな言葉を飲み込みながらも、さなえは戸惑いを隠せずに躊躇した。
「早く!」男の思いがけなく強い口調に、さなえは慌ててソファーから立ち上がろうとして思わずよろけてしまった。
「お仕置きが必要だな。自分で考えるな。言われた通りにすればいいんだ。」
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