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次に少女が目を覚ましたのは、部屋の中に誰かが入ってきた気配と物音によってだった。
「む。目が覚めたか」
「なんでまだいんの、アンタ……」
寝起きでけだるさの纏わり付く体を起こす。
暗い部屋の中でも、彼はうっすらと光の粒子を放っているのですぐに分かった。
ぱちり、と音をたてて付けられる明かり。
慈しむような瞳でこちらを見つめているそいつの姿を一瞥し、真帆は目を見開く。
「……って、その服」
彼は先程までの半裸ではなく、驚くべきことに服を着ていた。
あまりサイズが合っておらず、ぴっちりとしていて気持ちが悪い、と真帆は心の中で唾を吐く。
それが見慣れた兄の服だとすぐに気が付いたので、尚更。
「ああ、兄君に貸してもらったのだよ」
「へぇ、よく貸してもらえたね……通報されてもおかしくないのに」
兄は気さくで明るいが、さすがに半裸の不審者(しかも股間に妹のスウェット)にまで朗らかにはあたれないだろう。
しかし彼は不敵に笑う。
「そのあたりはさすがに『操作』した。それより真帆、この……」
「ち、ちょっと待ってよ。なに、『操作』って」
重要なことをさらりと流して次に行こうとする彼を止める。
ところが、なんでもないことのように答えるのだった。
「私がここで不自由なく使命にあたれるように『環境を整える』程度なら記憶などを弄れるのだが」
「そ、そんな便利な力持ってるなら、あたしに使ってくれたら早いじゃない!」
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