3854人が本棚に入れています
本棚に追加
/339ページ
アヤはエリザベスが僕の子かどうか、気になっていないのだろうか。
「アヤコも協力してくれるのか?そうか。しかし本当に何だって皆黒色インクで印刷するんだろう?紙も白じゃないといけないのか?しかも揃いも揃って同じような紙質で……」
ルドはそうブツブツ言いながら部屋を出て行く。
「さぁ手伝いに行きましょうか」
アヤは僕を見て言った。
「うん」
そして彼女の胸元を見ると、キョウとエリザベスがおっぱいをくわえながらウトウトとしていた。
二人とも、小さな口をモグモグとしたかと思えばスーッと寝息を立て、また思い出したように口をモグモグしたかと思うと、またスーッと寝てしまう。
「リズちゃんも“おっぱい星人”ね」
「リズ?」
「ベスだとベルと紛らわしいから」
アヤは完全にエリザベス、いやリズを育てる気になっている。
僕はフィラを膝から下ろし、キョウとリズをベッドに寝かしつけるのを手伝いながら、思い切ってアヤに尋ねてみた。
「君は万が一リズが僕の子だったら許せる?」
彼女は2人の服を整えながら言う。
「ヴァイオリニストだし、世界中に子供がいてもおかしくないって思ってるわよ」
「いや、冗談抜きで……。君はリズが僕の子かどうか気にならないの?」
僕は子供用のケットをアヤに手渡しながら言った。
「あなたはリズが自分の子だと困るけど、反面、自分の子じゃないとイヤだって思ってるんでしょう?」
その通り。
「リズは“ただ愛だけ”であなたの子供なのよ。ミユとモエがそうなように」
「……」
「違う?」
僕はまた泣きそうになって思わずアヤを抱きしめた。
強く強く抱きしめた。
そして声にならない声で言った。
「ありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!