サクノハ

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私の本当の名前は寿宮というのだそうだ。 十五になった時に養父、片桐希典から聞いた。 そうか、と妙に納得したのを覚えている。 私だけがこの家の異物なのは幼い頃から薄々感づいていたからだ。 たった一人の皇帝陛下とその他大勢の臣民達。 その桜流皇國としての有り様から外れた存在が勾崎なのだという。 どうやら、私はその一族から陛下に贈与されたモノらしい。 人間、ではなく道具。 陛下はこの道具に期待を込めて寿宮と名付けた。 それが、私の本当の名前だと養父は言う。 ────嗚呼、そうか。 私の、本当の名前なんて、 人間としての、名前なんて、 どこにも無いのだ。
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