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ひらりひらりと舞うのは、空に知られぬ雪。
掬おうと手のひらを差し出そうとしたところで子供じみているかと思ってやめた。
今は側に、秋月少尉はいない。
皇都についてすぐ、私のみが陛下に呼び出されたからだ。
秋月少尉は良い機会だと古書屋巡りをするらしい。私もそちらのほうが数段良かったのだが、そうも行かない。
今現在、私の身は皇女と同等とされているからだ。
任を解かれるまではずっとこのまま。
いつ任が解かれるかなんて考えないことにしていた。
軍人であることをやめた私が他にすることなんて考えられないというのもある。
実家と言えば勾崎だが行ったことも無いし、そこに所属する人に会ったこともない。
養家である片桐にしても、元皇女を嫁がせる訳にも行かないだろうし、とんだお荷物になるのは目に見えている。
「さきが見えない不安というやつなのかな」
一人呟いていれば非公式のお召しのため、歩いてこられたお姿が見えた。
こっそりと息をつめ、姿勢を正した。
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