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そうやって暫くだらだらと過ごしていれば、扉を叩く音が耳に入る。足音で相手は分かっていたので入室を許可すれば遠慮なく入ってくる長身痩躯。
「夕餉ですか、少尉?」
「半分は正しい」
「とういうことですか?」
尋ねれば、面倒そうな顔で肩を竦めた。
「司令官殿が謁見を希望されているそうだ」
「司令官殿?確か、水軍の……」
「そう。五島大佐。水軍の麒麟児だな」
元来船乗りの多い水軍は陸軍より思考が柔軟とされる。人事にもそれは表れていて優秀とされれば、旧賊軍の出でも上の地位に昇ることがある。
五島大佐はそういった人間の中でも有名な人物だった。
旧賊軍の出。
歯に衣着せぬ言動。
傲岸不遜な態度。
幾度か軍法会議にかかったことすらある曰く付きの人物だ。軍内部でも煙たがられる人間である。
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