7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
役所らしき建物が視界から消えていく。
段々と離れていっているらしい。
今さら流れからでることもできない。
ただ大きな機械の一部のように自由を奪われてしまっていた。
どこにいくのだろう。
加奈子は一人つぶやいた。
この多くの他人はどこにいくのだろう。
お互い知らない者同士であるのに何の意思疏通もなしに、同じ方向へ向かっている。
この先になにがあるのだろうか。
駅へついた。
加奈子は思わず笑ってしまった。
そうか今は朝なのか。
みな出勤するために駅へ向かっていたのだ。
もしかしたら駅であって良かったのかもしれない。
今年新調されたのであろう真新しい看板には西浜東駅と書いてある。
ここは西なのだろうか、東なのだろうか。
どちらにしろ現在地と時刻を知ることができた。
加奈子はふと思い立ちバッグの中を探った。
探った時定期券があったような気がするのだ。
案の定それを見つけることができた。
これで西浜東から赤坂までを行き来できる。
駅内の電車の発車時刻を確かめるため掲示板を見た。
隣にぶらさがっている時計を見るとどうやらすぐに発車するようだ。
加奈子は肩を落としうなだれた。
土産屋を物色しようと考えていたのだ。
仕方がないと、とぼとぼと一番線への通路を降りていった。
最初のコメントを投稿しよう!