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居間には古めかしい暖炉がその存在を主張していた。
薪までもが規則正しく並べられている。
「暖かい飲み物入れますよ。コーヒーですか紅茶ですか? 暖炉に火をつけていただけますか? マッチは暖炉の上にありますから」
いつきは一気にまくしたてると早々に台所へ向かった。
「あっコーヒーお願いします」
加奈子は暖炉の上のマッチを手に取り、マッチ箱の側面で擦り合わせた。
何度か擦ってみたが、なかなか火はつかなかった。
ゴミ箱が見あたらず、マッチを鞄に入れた。
すでに三本ほど無駄にしてしまった。
四本目を手に取り、擦ろうした時大きな手が後ろから差しのべられた。
「不器用なんですね」
いつきはいたずらっぽく笑いながら、暖炉に火を落とした。
「すみません。マッチとかあまり使ったことなくて」
「いいんですよ。都会から来たんですか?そこに座ってください」
いつきはコーヒーを加奈子に渡し、自分はゆったりとした椅子に座った。
コーヒーからは温かい湯気が立ち上ぼり、それが程よい温度だとわかる。
一口飲むと、冷えた体に染みわたっていくのを感じた。
ほうと息を吐き出すとまだ寒い部屋に白い煙が残った。
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