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暖炉の火が段々と燃え上がり、部屋全体に温もりが広がった。
暖炉の火は電気ストーブやエアコンで作られた暖かさとは違い、何かに包まれているような安心感を生んだ。
加奈子は体の力が抜けていくのを感じた。
まぶたが意思に関係なく閉じられていく。
どうしようもない眠気が全身を襲う。
いつきが何か話しているようだ。
唇がひっきりなしに閉じたり開いたりしている。
何も聞こえない。
何も頭にはいらない。
時々頷いてみるがそれも次第になくなっていった。
いつきは楽しげに大きく手を動かしていた。
今まで一人で寂しかったのだろうか、堰をきったように感情が流れ出しているのが見てとれる。
意識が朦朧としてきた。
時々見えるいつきの顔も霞んでいる。
加奈子は椅子に深くもたれこんだ。
また一口コーヒーを口に運び、椅子に体をあずけた。
ほろ苦い香りが口内に広がり、鼻から抜けていく。
「大丈夫? 眠いんですか? 」
「すみません。歩き通しで疲れてしまったようです」
「今日はもう休んで下さい。一番奥の部屋が空いているので、使ってください」
加奈子は礼を言って席を立った。
部屋から出ると部屋との温度差に身震いした。
部屋は多くあるようだ。
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