懺悔

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 高校一年生の春。だれもが心をはずませている入学式。私、向井鈴の心の中は後悔の念しかなかった。 (同じ学校だったんだ…。)入学式のため体育館にむかっていた私は、あの子を見かけた。大好きだった、今でも大好きな私のヒーロー。きっともう話をすることも、目を見ることも―――笑いかけてくれることもないだろう。 「…―――新入生退場」在校生の声で、ようやく私は入学式の最中であることを思い出した。(早く帰りたい…。)おそらく担任の先生であろう人に連れられ向かった先は1年A組のプレートがぶらさがっている教室だった。教室に入り、生徒が席につくと、先生が教壇に立ち話し始めた。「入学おめでとう。今日から一年間担任を勤める松村だ。よろしくな。」ありきたりなお祝いの言葉、自己紹介をした担任。もとい松村先生は出席番号一番から自己紹介をするよう指示した。(やっぱりいないか…。)教室内を見渡したけれど、あの子の姿はなかった。きっと学科は違うんだろう。安心して胸を撫で下ろした。でも、ホッとしている自分が悲しかった。 あの時守ったものは一時的な自分だけで、失ったものは過去の全て。未来の全てだった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!