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人を殺すのが嫌だった。死神失格だということは自覚している。
正確には殺すのとは違う。死んだものの魂を天界に運ぶだけ。
だが、それが問題だった。魂を体から切り離す時に、死者は抵抗する。会話を、する。
泣いた人がいた。怒った人がいた。諦めた人がいた。
なぜ人は死ぬのだろうか。
俺がいなければ、誰も死なないのだろうか。
もちろんそんなことは無かった。人は死に続けた。
だが、俺はもう魂を運ぶことは無かった。
そんなことをしても、何にもならないと知りつつも。
俺は、逃げた。逃げて、その先で、人として生きれば答えがわかるかも知れないと思い、人になった。
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